V模擬・W模擬の合格基準点の違い

都立を受験する生徒から、よくこういう質問を受けます。

**************************************************

★V模擬とW模擬で合格基準点が違うのですが、どちらを信頼したらいいのでしょうか?

私の志望校の合格基準点は、V模擬で710点、W模擬だと690点です。

W模擬の基準はクリアできているのですが、V模擬の基準はちょうどギリギリくらいの微妙なところで、どちらを信じていいのかわかりません。

**************************************************

確かにその通りです。

かねてから私もその疑問を持っており、いろいろ調べたうえで私なりの結論を得ています。
あくまでも、私個人の見解ですので、その内容について責任は持てませんが、1つの考えとして参考にして頂ければと思います。

なお、ここで使う言葉は次のように定義しておきます。

基準点:V模擬、W模擬の業者が設定した合格60%の数値

ボーダーライン:実際の入試の際の合格ラインとなる、合格最低点

 

V模擬とW模擬

まず、この2つの模擬について確認しておきましょう。

V模擬は、進学研究会が行う模試で、一般的には東京東部(23区)と千葉の入試に強いといわれています。

W模擬は、新教育研究会が行う模試で、一般的には東京都下(市部)と神奈川の入試に強いといわれています。

実際に中学校の進路指導の現場でも、この2つの業者から提供された資料を使うのが一般的で、塾でもよほど大手で膨大なデータを持っていない限りはこのどちらかの業者と提携しているケースがほとんどです。

いずれの業者も、入試後に合否と当日の得点の追跡調査を行いますが、個人で情報を提供してくれる人は限られるので、提携している塾から情報を提供してもらい、塾には進路指導用の資料を提供するというWinwinの関係で成り立っています。

東京都立高校入試については、事実上この2つの業者が独占しており、区や市で行っている学力調査の問題も、どちらかの業者が作成し、そのデータ処理をしています。

したがって、この2社が撤退したら、東京都の中学校の進路指導は成り立たないといえるくらいの存在です。

 

V模擬とW模擬の基準点は違う

都立受検の進路指導を長くやってきた方なら誰もが知っていることですが、実際に令和2年度入試におけるV模擬とW模擬の基準点を確認しましょう。

都立普通科の102校の基準点を確認したところ、V模擬とW模擬の基準点が一致する高校は男子で9%、女子で6%という結果でした。

最も多いのは男女ともに10点の誤差でしたが、驚くべきことに最大誤差は、なんと50点!

 

これは、志望校のランクが1つ、下手したら2つ違ってくるくらいの点差です。

自分の志望校の基準点は●●●点だ!と信じて努力して、そのレベルに届いたと思ったら、実は50点も上だったなんてことになったら絶望しますよね。

それよりも、実際の入試で自己採点をしたら基準点を40点も超えて「これは絶対に合格だ!」と安心していたら、実は10点足りなかった。。。。なんてこともあり得るわけです。

これはいったいどっちの数字を信じたらいいのでしょうか?

 

V模擬よりW模擬が簡単?

ネット上でもこの件については時々疑問を投げかけられていますが、私は納得のいく説明を見たことがありません。

例えば

◆V模擬よりもW模擬の問題は簡単だから

まず、この疑問に対して最も多い解説がこれです。

確かに問題を詳細に見ると、ややV模擬の方が難易度が高いように思えます。

都立そっくり模試で、「これは都立では出ないだろ?」と感じる難問が出題されることも珍しくありません。

対して、W模擬の方は極端な難問は少なく、確かに点数は取りやすいのはW模擬の方だと思います。

しかし、この説明では私は納得しません。

なぜなら、どちらの業者も模試での合否判定は偏差値で行っているからです。

模試の結果を見ると、模試の得点よりも当日の予想得点が高めに設定されて合否判定がされていることが確認できると思います。

 

都立共通問題の平均点は、ほぼ290~320点に収まりますが、模試の平均点は250~300点くらいです。

模試の得点から偏差値を算出し、その偏差値に見合う予想得点によって合否判定をしているわけです。

言うまでもなく、偏差値は平均を50としていますので、問題の難易度が違うことが基準点が違うという根拠にはなりません。

偏差値の算出方法についてはここでは省略しますが、「V模擬よりもW模擬の問題は簡単」であるならば、高得点を取る人が多くなり、高得点層の得点の散らばり具合(標準偏差といいます)が小さくなります。

この結果何が起こるのかといえば、難易度が低いと上位層は同じ得点を取って場合の偏差値は低くなるのが事実です。

つまり

 

「V模擬よりもW模擬の問題は簡単」ならば、偏差値も基準点もW模擬の方が低くなるはずなのです。

実際の基準点を詳細に確認してみましょう。

男子 女子
W模擬が高い 44% 40%
V模擬が高い 47% 54%

都立普通科102校の基準点を全て調べたところ

男子で、W模擬の方が基準点が高いのは44%、V模擬の方が基準点が高いのは47%(同じが9%)
女子で、W模擬の方が基準点が高いのは40%、V模擬の方が基準点が高いのは54%(同じが6%)でした。

ややV模擬の方が多いですが、ハッキリとした傾向があるとはいえません。

つまり、基準点の違いの理由を「問題の難易度」に求めるのは間違った理解だということです。

 

◆V模擬の方がデータを多く持っているから信頼できる

確かにシェアはV模擬の方が勝っていると思います。

中学の進路指導の現場でも、V模擬の資料を使っている学校の方が多いのも事実です。

しかし、最も重要なデータは、「ボーダーラインがどこだったのか」の1点です。

もちろん、より多くのデータがある方がより詳細なボーダーラインを特定しやすいことは間違いないのですが、正しいボーダーラインから50点もの違いが出るほどデータ量が少ないのであれば、そもそも受験業者として成立しないのではないでしょうか。

V模擬の方が多くのデータを得ているのは間違いないと思いますが、W模擬がボーダーラインを何十点外すほどのデータしか得ていないとはどうしても思えません。

 

◆偏差値を出している母集団が違うんだから、基準点が違っていて当たり前だ

そう、最終的に行きつくところはここなのです。

しかし、「違うんだよ」と言われても、基準点が50点も違ってしまうと出願校を決めるときに困ってしまいます。

少なくとも、ある程度の傾向としてどちらの数字により信ぴょう性があるのかという判断基準が欲しいところです。

実際の進路指導の現場では、そこがわからないので

「安全のために、基準点が高い方で考えておきましょう」

ということになります。

それはそれで正しい判断なのだと思うのですが、もう少し判断材料が欲しいですね。

◆V模擬は東に強く、W模擬は西に強いので、自分の志望校が東東京か西東京かで判断する

地域性についてはその通りだと思います。

ただし、収集しているデータ数にそれほどの違いがあるのかといえば、東東京でもW模擬はやっていますし、西東京でV模擬はやっています。

東東京でW模擬と提携している塾もあるし、西東京でV模擬と提携している塾もあるし、得意エリアはあることは理解できるにしても、そこまで基準点に違いが出るほどの差があるのでしょうか。

では、都立普通科102校の基準点を調べてみましょう。

23区、つまり東京東部の高校では、

男子 女子
W模擬が高い 58% 50%
V模擬が高い 33% 45%

男子で、W模擬の方が基準点が高いのは58%、V模擬の方が基準点が高いのは33%(同じが9%)
女子で、W模擬の方が基準点が高いのは50%、V模擬の方が基準点が高いのは45%(同じが5%)

 

都下、つまり東京西部の高校では、

男子 女子
W模擬が高い 24% 26%
V模擬が高い 67% 67%

男子で、W模擬の方が基準点が高いのは24%、V模擬の方が基準点が高いのは67%(同じが9%)
女子で、W模擬の方が基準点が高いのは26%、V模擬の方が基準点が高いのは67%(同じが7%)

これは都下では明らかな傾向が出ましたね。
23区の女子は微妙ですが、1つの傾向として

23区はW模擬の基準点が高く、都下ではV模擬の基準点が高い。

理由を考えてみると、例えばですが

それぞれ得意とするエリアでは詳細なデータを持っているので、より突っ込んでボーダーラインに近い基準点を出せるけれど、データの少ないエリアはより安全圏でボーダーラインを設定しているという解釈は成り立ちそうです。

ただし、志望校が東東京なのか西東京なのか迷ってしまうようなエリアだとどっちを信じたらいいのか困りますね。

 

V模擬・W模擬の合格基準点の違い(その2)へ続く

関連記事

ページ上部へ戻る